トーマス・ダウスゴー+新日本フィル

ダウスゴーが来るので行っておかねばなるまいと思って今回の遠征を決めました。というわけで遠征のメインはこのコンサート。

場所はサントリーホール。このホールにはあまりよい記憶がない。この前聴いたのはRAエリアの前方でゲルギーの振るワーグナー。あまりの味気ない音と、ステージの縁ギリギリに斜め向いてソリストが並んだせいで*1ソリストの背中を眺めるという声楽的には最悪の条件で聴く羽目になったせいもあるかもしれないが、なんじゃこりゃと思った*2。今回は下調べをバッチシして音響的に評判の良い席を調べ、デルタとか呼ばれている辺りが良いと知り、陣取ったのは2階のRBエリア6列目。ちなみに7列目以降とちょっと違うらしいが、確かにこの辺りは、直後のエリアに比べて生々しい音がした。

実は聴く前は、私の好きな京都コンサートホールの3階サイドC〜Dや、ROHのグランドティアのサイドBOX席、DKT新劇場の3rdバルコニーサイドのような、それはそれは心が洗われるような繊細な、でも宝石とかじゃなくて、よく磨かれて光る瑪瑙石のような(イメージ映像)綺麗な響きが楽しめる場所かと予想していたのだが、ついでに私は最近これらのお気に入りの場所のこの響きはオケ上かつ一定距離離れるとこの響きが楽しめるのではないかと仮説を立てていたりしたのだが、残念ながら予測が外れた。そもそも座った時点で、あの響きを期待するには近過ぎた。じゃあどんな音かというと、あの近さの割に、有り得ないほどまとまった音がする。この特徴に尽きる。これなら、どんな演奏も、まとまった演奏もそうでない演奏も、それなりにまとまって聴こえるだろう。しかし私は非常にデッドなホールで、ずっとずっと解像度を上げ切った状態で、それでも音楽としてのまとまりがある状態が好きなのであって、「あえて過酷な条件下ででそれでも」を求めているのであって、「そうでない演奏もそれなりに」的な方向性のまとまりは、ものすごく好きかというと、違ったりする。

ええま、私にとって特別にならなかっただけで、普通に楽しめました。一般的な日本人なら「良かった」の評で済ませるシチュエーションだと思います。5段階評価の4みたいなときにしつこく言及するのは私の癖です。


新日本フィルは、結構いいんじゃないでしょうか。弦セクションはいいと思います。ただ、各楽器のソロで「はっ」としたり「おっ」と思ったりする音色が無くて寂しいです。シベリウスのときのトロンボーンの首席がまだ耳を引く音を出してたかな。でも総合的には良いと思います。ただの素人が「後ここが」と挙げられるくらいなら、かなり出来ているというのが私の持論です。


お目当てのダウスゴーの指揮。まず1曲目のチャイコの時点で、なかなかいいんじゃないのと。不満が出ません。珍しい。ただこの時点では、私の期待してきた、あのシベリウス6番で目覚めたダウスゴーならではのあのコクはまだまだありません。いつもあるわけじゃないので、今日必ず聴けるとも思っては来なかったのですが。

続くシベリウス7番。キターーーー!冒頭からいきなり「あの6番」と共通の、あのコクのある調子が展開されます。今日来て良かったー。これを聴けたので超満足。今日出してくれるとは嬉しい。DR響とのときみたいな疾走感やゆるやかなビッグウェーブはないものの、中盤では少し落ち着いちゃったかなという印象もあったけど、それは曲目の違いもあったかもしれませんので、終盤はまた聴かせてくれましたよ。

休憩を挟んでニールセン不滅。ニールセンの交響曲としては一番日本で知られている曲なんですかね、たぶん?前半のプログラムと比べると、やっぱ分かりにくいかな。DR響のプログラムとかディスクリリース状況を見るに、デン人指揮者としては、ダウスゴーはニールセンにそんな力を入れているようには見えなくて(誰を基準にするかにもよるのだろうけど)、むしろランゴー紹介者とか、そういうもっとマイナーなデン人作曲家・曲の発掘が特徴な気がする人ですが、ニールセンに関しては、もう一声欲しい気は致しました。この曲の笑いどころ、ティンパニ2台の撃ち合いのところは、私のいたR側だと、正面一直線になってしまって、あんまり笑えなかった。この曲の前に休憩が入るのだから、左右に並べ直して欲しかった。

また5段階評価の4、いやむしろ4.9のときにあと0.1ポイントをしつこく書く癖が炸裂してる気がしますが、総合的には大いに満足した演奏会でした。次はシベリウス6番振りに来て。京響で。京都にゃ単独で呼ぶ予算はないから、どこか東京のオケが呼んでください。


こんだけ「あの6番」とか連呼してると気になると思うので、音源付けときます。2007年のDR響の木曜コンサートの音源。録音失敗して最後の最後が切れておりますが、これで聴いた人は気になって気になって、ダウスゴーの6番誘致に協力してくれる筈(←なんだその滅茶苦茶なオチは)。

Jean Sibelius: Symfoni nr 6 d-mol op 104
Dirigent: Thomas Dausgaard
Orkester: DR SymfoniOrkestret
Optagelse: Torsdagskoncert; Thomas Dausgaard/DR RSO (Radiohusets Koncertsal) 20.09.2007
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最後に、日本でダウスゴーが脚光を浴びる機会自体が貴重なので、オススメディスク2点。DKTの古いオペラ*3と、最近の天体の音楽。どっちも偶然ランゴーです。

*1:あまりにもオケがいっぱいいっぱいなんで、ソリストの前の楽譜を並べるスペースが無く、斜め配置という混み具合だった。

*2:そんな席を取る方が悪いが、ミーハーだからソリストの近くに行きたかったんだもん。

*3:冒頭に写るダウスゴーが若い!