全然ダメだったー@ROHジークフリート

今回の旅は、全然ツイてないかもー。気が滅入るようなトラブルもあったし、なによりジークフリートROHがダメダメだったー。ジークフリートは私の期待が高い(というか狭い?)という前提があるから全く期待してなかったんだけど、しかし、いつも要求している芸術レベルの問題じゃなくて、普通に芸としてイマイチだった。以下、観終わった直後に書き殴った音楽以外のレポです。音楽については後日。これから黄昏に行ってきます。

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いやあ。これは駄目でしょう。久々にこんなに全力で駄目な例に当たってしまった。いつも皆が満足なパフォーマンスに変な理由で駄目出し・・・つーかある程度以上の水準あることが前提のその先を求めて一人変な評価を出し続けている私でありますが、今日のはそういう捻った評価軸の話ではなく、素直にダメでしょう。

しかしROHでは、今日までに7演目(リングをバラで数えて)観たことになるわけですが、全部のレポは書けていませんが、特に著しく駄目だったときにはモティベーション的に書かないわけですが*1、これはないなーレベル2演目、不満1、まあまあ(もしくは座席が悪過ぎて評価不能)1、部分的に不満もあったが満足2、心から満足1という内訳になっておりまして、5段階評価で1をとってしまった演目が2つもあり、2も1回ありますから、いつ観てもそこそことはとても言えません。

これを思うと、日本のオペラなんかはいつ観ても3以上は提供してくれるから、もちろん毎日なんかしらやってる常設の劇場と「年に一度の晴れ舞台」を比べてはいけないのでしょうけど、でも 本場 有名歌劇場ってもこんなもんですよ。大体私は「いつも3」な存在に冷淡なのですが、こういう目に遭うと、オール3も見直さないといけないなあと思ったりします。

ROHは箱のデッドさ加減も相当影響してるので、ハンデも大きいんですがね・・・生音の芸術が箱込みで評価されるのは仕方無いことです。


さて、本論に入りましょう。まず演出が良くないです。特に東京リングを観てしまった人は観ない方がいいです。あれと同じコンセプトが、思いっきり薄まった空間で、視覚効果イマイチになって出てくるだけです。あれが気に入った人ほど止めておいた方がいいかと。私自身は東京リングは評価しない派ですが、自分が何を重視した結果低評価なのか、評価する人はどこを評価しているのかは、全くの別物として分かっているつもりです。

かいつまんで紹介すると、1幕は墜落したプロペラ機を背景にしたセット。そこを根城にする浮浪者2名+訪問する浮浪者1名。プロペラ機のオイルタンクからホースをドラム缶に繋いで火を出してノートゥングを鍛えたりするのが見せ場。登場人物がプラペラ機の翼に乗ったり降りたり後ろに回り込んだりと、動きは普通のオペラ。出だしのミーメの嘆きで乳母車に入った赤ン坊に剣を持たせたり、ジークフリートの子供時代?と思わせて次の幕で小鳥だと判明する小鳥役の少年(中身はソプラノ)に剣を持たせたりするのがKWっぽいくらい。

2幕は、暗い何の変哲もないファーフナーの穴の前。ヴォータンはなんかヒッピーぽい*2。森の囁きのシーンになると、この暗い穴のセットが上がって下にちょっとした草むらが出現して、ここにジークフリートが寝転ぶ。両親のくだりになるとオスメスのゲゼルが両サイドから登場する。そこは孤独を表すシーンだからそれやっちゃアカンとこの前も言ったろう(と私がツッコむ)。上から吊り物の小鳥が出てきて、葦笛を吹くと墜落して笑いを誘う。この小鳥はファーフナーが倒れた後(小鳥が言葉を喋るようになった以降)は白い服を着た人間の男の子の姿で登場する。また逆さ吊りもやってた。歌手を逆さにするのは頂けない。この幕で唯一この小鳥のソプラノの姿だけがチャーミング。他はみな小汚い(森の囁きのシーンのジークフリートが小汚いのは嫌だなあ)。

ファーフナーは何故か普通に人間の姿。椅子に座ってる。倒されると、頭に被っていた頭巾(ルービックキューブみたいな外見)がとれて地面に落ち、このルービックキューブを持ち上げると、ラインの末端肥大症の兄弟のうち頭が大きい方が出てきて、頭だけで歌う。ミーメのシーンは、穴に入ったミーメが、本心を喋るときは狼を被って、それを訂正したりするときは人間の頭で出てくる。相変わらず慌しい。大体このシーンも、ミーメが変わるのではなく、ジークフリートが聞く能力の方が原因で聞こえているものが変わるのであるから、これは本音が聞こえてくるシーンで血をペロペロしたりする王道演出の方がよっぽど的確だと思うのだが。

3幕は、しょうもない。今回も中央にグルグル回るセットがあり、今回はエルザではなくヴォータンが載っている。あのグルグルはKWのここの音楽に対するイメージなのだろう。エルザが高い椅子に乗って出てきて椅子毎動いたりする。椅子から零れ落ちる長い豊かな波打つ金髪が美しい。「お前もそのような者ではない!」で刺し殺される。

祖父と孫のシーンになると、グルグル回ってたのが垂直に立って、そこにドアが一枚。ヴォータンはここに槍を貼り付けて行方を阻み、ジークフリートがそれを叩き割って扉をくぐる。

ブリュンヒルデのシーンは、またもや垂直な壁の向こうに姫が寝ていて、ヒーローがドアの向こうを窺っては観客に報告しにやって来る。ここも分かってないと思うんだよなあ。この人の理解は言葉尻だけで出来ていて、本当に浅い。ブリュンヒルデが起きると、歌詞に合わせて3回くらい壁が反転して、そんでおしまい。

というように東京リングと共通のコンセプトで、全く進展してませんで、視覚効果がヘボくなって帰ってきました。新国のときは劇場の機構やスタッフの力も大きかったのでありましょう(予算もかな?)。日本て、そういうポイントでは本当に優秀だから。今から黄昏に行ってきますが、黄昏は日本の再演のときに初演の評判を見て警戒して観なかったので、初見になるので少しはマシに観れるんじゃないかと思います。いや、やっぱり理解の浅さにイライラするだけかも?

東京リングのジークフリート評と比べながら読みたい方はこちら。この頃はレポが詳細だったなあ。
http://d.hatena.ne.jp/starboard/20100223
http://d.hatena.ne.jp/starboard/20100225
http://d.hatena.ne.jp/starboard/20100226

*1:逆に良過ぎて大事にしようと寝かせ過ぎて書けないこともあるので、書かない=ダメだった、というわけではない。

*2:が、ターフェルのガタイが良過ぎてヒッピーっぽくない。ヒッピーといえばガリガリのイメージ。