神々の黄昏@ROH2012

最初に例のごとく座席の話。今回のリングの発売時には6割くらい行かないつもりでサイクル1とサイクル3のサイクル切符をとりあえず確保しておいて、行かないつもり大だったから一番安いAmphitheatere(5階)のステージ上の安切符(サイクルで68ポンド)にしておいたのだけど、5月のサロメを見たらどうしても見逃せなくなってしまって、それまで私はどうせ遠征するならジークフリートとかトリスタンとかタンホイザー、せめてジークムントあたりで聴きたくて*1、ローゲはノーマークだったんだけど、5月のヘロデを聴いたら、やっぱ彼のキャラクターは主役級ヘルデン以外も面白い!絶対見逃せない!と思って、結局行くことにしたんです。

でもその時点以後だとチケットは泣いても笑ってもソールド・アウトで、なんとか追加発売の噂を聞きつけて、Stalls Circle(2階)の3列目&立見切符を手に入れた次第です。この時点で黄昏は人気らしく立見席しか無かった。それでシーズンオープニングのラインは、追加入手したStalls Circleの3列目で見て、ジークフリートはその後ウォッチしてたら*2直前にひょっこり放出されたOrchestraの10列目センターブロックの端席を、これを今ゲットすればアナセンのカバーが聴ける予感がして願掛けのつもりで入手して*3 *4、でも交代劇もなく歌も冴えなかったので超ガッカリで、そして黄昏だけは全く放出チケットに当たらなかったので、Stalls Circleの正面後方の立見席はオーケストラよりもさらに音響悪そうだし、ということで、消去法で当初確保したAmphitheatere のオケ上に座ったのでした。

私は、Amphitheatere のオケ上には、もともとは良い印象を持っていたんです。最初の遠征時に2演目くらいこのエリアで聴いて、音響的には満足してて、だからサイクル切符の販売のときにもここを確保しておいたのです。ところが次の遠征時のファルスタッフでなんか遠いなあ(音響的な臨場感が無い)と思って、それから慌てて、別の座席を入手しようと画策したわけでした。それで黄昏だけは入手出来なかったので当初の席ということになった次第で、そんな経緯だったから全然期待せず座ったわけです。


ところが!ところが!オケが演奏を始めた途端、びっくらこきました。素晴らしい音がするではありませんか。このリングを通して共通する金管の実力不足は変わりませんが、響きが雲泥の差です。なんてこったい!私は元々持っていたこの座席を捨てて、あえてイマイチな席を拾っていたらしいのです。しかもオーケストラなんて200ポンド以上したのに。Stalls Circleの3列目だって80ポンド。ここは17ポンドですよ。なんて皮肉なことでしょう!*5 *6

そういうわけで、何はともあれオケが主役の黄昏鑑賞と相成ったのでした。ここでオケ話を致しましょう。一番気になったのは、上記の金管です。地元ファンに言わせると、編成が大きいからトラが入ってるせいらしいのですが、しかし大事なソロまで抜けた音です。そんなトラに大事なとこをやらせるなよ、と思うのですが。金管の合奏は揃わないのがデフォでしたねえ。特にホルンの合奏は酷かった。一方、木管や弦は良かったと思います。特にここの低音弦は私は最初に聴いたときから好印象です。

ここで日常を省みるわけですが、自分にとって馴染みのないオケって金管に不満が出ることが多いのですが、元々金管には厳しい自覚もあるのですが、そんだけ普段に良い金管に当たってるのかもしれないですねえ。なんとなくそのくらいが当然になっていてその先ばっかり求めているのですが、こういう機会に感謝せねば、と思うのでした*7

金管の件を除けば、パッパーノ節の、抑制された、静謐な、しかしそれだけではないワーグナーを味わうということでは、なかなか楽しめた経験でした。これをなんて表現していいか分からないんだけど、ワーグナー好きの癖にドイツ系の演奏は重過ぎて(勿体ぶり過ぎて?)正直あんま好きではない私には、特にドイツ物においては元々パッパーノ節と相性がいいんだと思います。パッパーノのワーグナー、なんか、爽やかだよね(笑)。初夏の風が吹いてそう。最上階で聴いてると、つむじ風になって谷底から旋回しつつ上昇してくる風が頬に当たるようだ。

ついでにROHのドイツ物はダメじゃないか疑惑もあったので、レポ書きかけで放置しているサロメの演奏もいまさら言及すると、あれは思いっきりオケに不満でしたねー。鳴らし過ぎでうるさい領域に入ってたし。いや、結局、単純なる音の大きさというよりは、サウンドの構成そのものがダメなんでうるさく感じるんだと思う。あれに当たったら、たしかにダメだこりゃ・・・ってことになるかと。ただ、今回のリングではそれとは確実に違ったと思う。金管が毎回「ぷっ」「ぶっ」ってやってるとか、そういうのはあったけど*8

いやまあ、金管の件を除いても、誰が指揮者に来てもそれなりの演奏が出来るかって判断基準だと、ノーを出さざるを得ないか。あれ?あと編成が大きくなったときのトラの管理も含めてオーケストラの実力だよね。

歌手と演出のレポはまた明日。

*1:ジークムントを「せめて」扱い(苦笑)。だって彼のロールの中ではこれってライトな方なんだもん。

*2:リングはオンライン販売ないので毎日々々電話してましたとも。もちろんデンマークからも電話してましたよ。

*3:ヴィンケよ、すまん。

*4:ちなみにアナセンはこのリング中主要テノール全部のカバーだった。

*5:しかしオーケストラの10列目でダメなのは本気の本気でアカンと思うよ・・・>ROH

*6:これはハードの問題だけどさ。

*7:私の「普段」の基準は、京響とKglカペルとDR響です。特に京響金管には毎度厳しくてすみません、と他オケを聴くと思います。

*8:ちょっとここは中学校の吹奏楽じゃないんだけど。