ドレスデンのボリスレポ(偏った音楽編)

まだ書くのかー本当に10本書く気やろーのボリスレポシリーズです。

音楽については、帰ってすぐ書いたように、もう大分記憶が薄まってしまったのですが、ものすごく偏っていることを承知で、いまも印象に残っていることを挙げておこうと思います。まだ私には音楽を聴いて音楽そのものについて書くってことは荷が重いです。自分の感覚の話が中心になります。

  • 一番印象に残ったのは、実はオーケストラです。軽い、というとアレかな、軽やかでまろみのある音でした。ここのオケは「いぶし銀」と言われるそうですが、私にとっては「鈴」でした。あれれ?格が下がっちゃった?そういうつもりではないんですけど。前に書いたことを引用しますが、凛として、澄んでいて、でも深くて、それでいて転がるようでもあり。これが鈴なんです。2日連続で聴きましたが、ヴァイグレさんの指揮になって、より一層軽やかになったと思いました。
    • ところで、これ書くだけでめっちゃ照れるんですけど。もうこれ以上は無理。何に照れてるんだろう。なんかこう、ロマンティックっぽいことを自分が言ってるってのが、ダメなんです。めっちゃ照れ性です。身も蓋もないことを言ってロマンティックを薄めたくなるんですが、演奏者に失礼だと思ってぐっと我慢です。ところでこの性質って根本的にオペラ向いてないんじゃ?*1
    • これ書くために見直してて気が付いたのですが、来シーズンは指揮者も変わるのですね。ヴァイグレさんのときに聴いておいて良かった。
  • ムソルグスキーで、特に原ボリス*2で軽やかはどうなのよってのはあるかもしれません。が、今の私にとっては魅力的でした。後述するバランスの問題で、伴奏時にはもっとふわっと軽やかでも構わないくらいです。
  • 実演に接した数が少ないから、どうしても録音との違いが気になるのですが、実演だと、オケと歌のバランスの問題として、オケがずっと大きく聞こえることが予想外でした。人間の感覚は馴染んだものとの違いを強調しがちですから、オケの方がずっと(録音との)違いが(私にとっては)大きかったということかもしれません。
    • Perkettの前の方の席ってのも関係あるかな。ただ、2.Rangに座った前日の公演の方がこのバランス問題は大きかったんですよね。却って、4階席で聴いた3月のフィガロの方が歌が強調されてた気がするくらい。演目の違いもあるのでしょうが。次回は是非、噂に聞く最上階のセンター席を試してみたいと思います。
    • とか書いてて思ったんですけど、実は、こんなん常識だったりします?録音と違うのは当たり前ですもんね。もちろん、ある程度違うのは覚悟していたのですが、こういった方向に違ったのは予想外でした。
  • 歌手のみなさんには個別に言及出来ないので、極めて偏った言及になりますが、やはりトムリンソンが良かったと思います。音が、劇場の床を伝って目の前で立ち上がるように感じました。この個性はすごいです。
  • あとは一瞬いいなと思ったポイントも色々あったんですが、どうして良かったのか言語化出来ないので割愛します。ごめんなさい。ただのGoodだけなら、演出中心のレポの方にその都度書いてます。あ、そっちに書いてない項目では、コーラスが良かったです。どういいかっていうと、綺麗なハーモニーなのはもちろん、他の音とのバランスが良かったです。バランス重要。
  • パーペは、歌そのものは、うーん、録音を聴き過ぎちゃったから、どうしても比べてしまう。こういう評価ですみません。ただ、あの声はやはり特別です。パーペ1人が歌ってると録音とつい比べてそこに意識がとられてしまうのですが、他の人と声が被ったりすると、全然違うのです。目が釘付けならぬ、耳が釘付けになるのです。
  • 歴代ボリス歌手と全く違う個性なのは間違いないですね。キングだけど、1人の人間としての距離感を強く持つキャラクターです。現代劇にしたのは正解だと思います。
  • あともうひとつパーペで思ったのは、彼は演技を顔としぐさでかなりしながらも、歌のスタイルを崩さないところがあるよなあ、と。激しい演技をしても歌のブレがないのは職人芸の一種だと思います。たぶん本人の美意識というか、意識してやってるところだと思います。声で没入出来ると全く気になりませんが、そこで入り込めなかった場合、ちぐはぐな印象を受ける人もいるだろうと感じました。どんパペ(「ルネ・パーペはどんなときでもルネ・パーペ」の勝手な略)を否定的に評価する人ってのは、こういうところが引っ掛かるのかなと思いました。
  • 辛いことばっかり書いていてすみません。好きなもの期待してるものほど辛い評価になるのは職業病みたいなものでして。客観性はないです。思いっきり偏ってます。
  • あと発見したのは、私がスロー・スターターですね。歌手じゃなくて鑑賞者がスロー・スターター(笑)。
  • いまこのプロダクションで音が聴けるのは、ゼンパーのビデオの音声だけだと思いますが、鑑賞した後で見ると、いろいろ気が付くことがあります。実演でよく確認して来れば良かったと思うけど遅い。例えば、2:02くらいで聴けるこの綺麗な声は誰?*3こんな人いたっけ?直後にシュイスキーが歌ってるけど違いますよね?コーラス?
  • リサイタルも含めた私の敗因はですね、普段聴いてるときのボリュームが大き過ぎってのがあったと思います。そして、こんなん言うとクラオタの人から大顰蹙を買いそうですが、うちで一番まともなオーディオはカーオーディオでして、専用ルームを持てない貧乏人の味方、移動オーディオルームです。ゆえにボリューム大きくなりがちです。さらに、(いつも聴いてるシステムの特徴を自分で客観的に表現するのは難しいので)自分の車に乗せた人が初回必ず言う感想を引用してその特徴を紹介するとですね、「目の前30cmのところで歌われてるみたい」だそうです。本来は出ない*4音量で聴いてることがよく分かる台詞ですね。
    • さらに顰蹙を買いそうなことを書きますが、反省点はですね、クラブミュージックのような大音量でクラシックを聴くのはどうなのよ?>自分ということでした。次の鑑賞に向けて自粛したいと思います。というか、目の前30cmで全開を期待するのはどう考えても無理があるよな。うん。

*1:つーか芸術全般向いてない。ダメじゃん。

*2:ここでは、ムソルグスキー本人のアレンジという意味で使ってます。

*3:珍しく高い声を褒めてるよ。

*4:増幅無しには出ない