ワルキューレ一幕聴き比べ(1)

この出来事からショックを受けてはじまった企画、行くぞワルキューレ一幕聴き比べ!方針はNaxosライブラリで聴けるもの全制覇です。以下の6枚をリストアップしました。聴いた順です。星の数は没入度で、黒星が多い方が没入出来るということで。

念のためですが、これはヘッドホンでながら聴き(たまに集中)パターンで聴いたので、解像度の高いシステムにかけたら評価を変える可能性はあります*1

    • 序曲のうねりがGood。序曲のテンポに乗ってるとすぐ超ゆったりになる。時代のせいかこの盤がそうなのか、歌手のみなさん超ゆったりおっとりである。感情が高まる場面でも叫ばずに「うたって」ます。逆に言うと、今は演劇的というかなんかというか、この一貫してうたってる感覚は無いなーと気付かされる。しかしフンディングがドスを効かせる場面でうたってたりするのは、かなり新鮮ではある。ジークムントがときどき甲高くて*2ヘンなところ以外は、まあいいんじゃないでしょうか。ジークリンデは終始上品でよいかと思います。
      いろいろケチを付けたが、没入度はそれなりに高い一枚。テンポのせいか安定感もある。現代の聴衆に戸惑われるかもしれないが、このくらいうたってみたらいいんじゃないのと思ってしまった。
    • 音の組み立てがよい。没入度高し。ダイナミックレンジが広い現代的な演奏。オケのドラマ解釈が、コペハン解釈と一番近い。一幕一場がちゃんとエロい。むしろそっち方向につき抜け過ぎで、弦の引っ張り加減なんて、人によっては嫌らしいと思う領域かも。しかしそんなことよりなにより、高揚効果が一番高い。この効果の前では個々のパートや歌なんてどうでもよくなってしまう。投げやりな意味でどうでもいいんじゃなくて、やっぱり誰それの歌がどうのこうのに神経が行ってるイコールちゃんと聴けてないってことなんですよ、私の場合。しいていえば、フンディングが常識人だなあ。いやこの3人みんな常識人かも・・・・と思っているとジークリンデがひとり突き抜ける。フンディングがいなくなった途端の変化がよい。でも(メゾならともかく)アルトってなんですか。表記間違いじゃないんですか?>Naxosさん。ジークムントは常識人のまま。
    • これは私は駄目だなー。何度読んでも頭に入らず同じところを読み返してばかりで、ちっとも読み進められない文章みたい。演奏としては繊細で音楽的には評価すべきかもしれないが、没入度という観点からは低い。途中から出てきたフンディングの独特の存在感に救われる。と思ったくらいで以降聴き流してたらヴェルゼ・クライでえらく盛り上がっていた。以後再び集中するも、やっぱり入れず。声はみな綺麗でスタイルも端正。安定感もある。文句の付けようが無いのに届かない音源。
    • 序曲、早っ!嵐じゃなくて、洪水だ。あっという間に飲み込まれる。管が明後日な音を出していても気にしない!だって洪水だもの。登場していきなりジークリンデがよくうたっている。この私の「うたっている/いない」ってのはなんだろうなー。旋律を辿ってるんじゃなくて、体に馴染んでその人の中から音が出てくる感じ、歌唱の消化具合なのかなー*3 *4ジークムントは言葉がぱきぱきとしてて深い声で全くテノールっぽくない。メルヒオールは秘かに期待してたんですよ。同じデンマーク出身のヘルデンテナーということで、アナセンの記事を読んでるとよく出てくる人である。ほにゃららとしたアナセンとは全くタイプが違うのだが*5、共通する部分が無いわけじゃない。この役に対する解釈なんか相当近いんじゃないかしらん。ヘルデンテナーがいいとこ行ってるとメルヒオールを聴けとコメントする人が出るので、私はそっから逆算して、コメント欄にメルヒオールの名前が挙がってたらこの歌手はいいとこ行ってんだなーと判断しているくらいである。こういうのが理想のヘルデンテナーだとすると、バリトンパートにすれば良かったのに、と思わないでもない(暴言)。とはいえ、聴いてて人物像がすごくよく伝わって来るので、やっぱ稀有な人だと思う。
      一幕一場にエロさは無いな。これがメトの伝統なんだな。オケによる高揚効果は無いけど、その分変化で楽しませてくれたし(なんせ洪水だ)、歌手が面白かったので、他の盤とは違う意味で没入出来ます。アドベンチャー映画のように目が離せないディスク。
    • もう一枚メルヒオール。この人は上で書き過ぎちゃったので、書くことが尽きちゃったよ。上よりは暴れん坊度控えめかな。このジークリンデは聴いたことがある気がするが、今日出てきた誰かだっけ?聴き直して確認する気力が無い。古い音源だけどフンディングが現代風で、結構心地よい声。オケの空間設計はよろしい。一幕一場のエロさは控えめ。でも疲れて書くことが思いつかなくなってきたな。あと一枚か・・・・

*1:が、これは是非ちゃんとしたシステムで聴かなければ、と思う盤はなかったので、当面やる予定はありません。

*2:声質的にそう聴こえるという意味です。

*3:用語としては逆のような気がするが、口で歌ってるんじゃなくて体全体でうたっている感じというか。

*4:その後気付いたが、これは「よくうたっている」の説明だった。フルトヴェングラーとエールリングについての「うたっている」言及では、「叫んでない」という意味合いが強い。

*5:言及記事でも、まず違うという文脈で出てくる。