ワルキューレ一幕聴き比べ(2)

(1)からの続きです。

    • こちらも、フルトヴェングラーと同様に序曲後はテンポゆったり。うたっている(叫んでない)ディスク。やはりこの時代の特徴なのだろうか。一幕一場のエロさは控えめ。メルヒオール路線でパキパキと深めテノール。結構ニュアンスのあるジークムントで、過去語りのシーンで調子が出る。一場から全開なのはひょっとして異色なのだろうかと考えさせられる。ジークリンデが細くて可憐で上品。この時代はそういうもんだったんだろうか。フンディングが敵役というより長老である。試練を出した後で見守っていそう。
      今回この盤とフルトヴェングラーについてはいい意味で驚かされた。どれを聴いても旋律を辿ってるだけ(に聴こえる)&安定して聴こえない問題に関しては、テンポが性急過ぎてしっくり来ないという要素も大きかったようだ。
    • ・・・・すいません。なんか噛み合わないんです。歌手ががんばっていてもオケが歌い上げていても、なんかちゃんとキャッチ出来なくて、自分の外側をするすると流れていってしまう。いろいろ聴いた後で聴き直して思ったんですが、オケが原因だと思いました。歌手のせいにしてすいませんでした。入れる音源って最初の一小節目から入るんですよ。そこで駄目だから駄目な種類の音源でしたこれ。
      それにCD化された音源とたまたま手元にあった一公演を比較するのが無理ってもんですよね。いろいろすいません。
    • 星がひとつはみだしちゃいました。
      単純に没入度ということではヤングも良かったんですが、ちょっとやり過ぎ感があって、コペハンはバランスがいいんです。あと改めて他の音源を聴いた後だとヴォーカル的にもグッドだと思いました。初期の頃には、自分が気に入るようなものだから客観的にはそれほどでもないんだろうなー*1、それに過去の音源にはもっともっと優れたものがあるのだろうから過大評価してもいけないと思っていたのですが、一応こんだけ聴いた後だから、評価してもいいでしょう。
      アナセン表現力すげー。戦ってる土俵が違うわ。マイリングさんは声のインパクトがすごくてドスが効いてる。この人は初聞のときから分かりやすい方向に良いと思うのだが、ブレイクしないのだろうか*2。Sjobergさんはかなり個性的である。コペハンリングがフェミニズム・リングであることに関係するかもしれないが、今回のディスクでこの人以上に太くて強いジークリンデはいなかった*3
      コペハンリング鑑賞の機会のある方は、一度画面を消して音だけで試してみてください。いっそ映像付き鑑賞の前に音聴いた方がいいかも。いや芝居はちゃんとしてるんですけどね。でも画のせいで損してると思いますよ(まだ言うか)。

今回聴き比べしてみて、非常に印象に残ったことがあるので、(3)に続きます。

*1:失礼な思考回路である。

*2:まあそういう存在の人はいっぱいいて、そこから頭ひとつ出るかどうかはほんのちょっとしたことなんだろうけど。

*3:メト(1941)のトローベルはマイペースという意味で強いかもしれない。