マーラー復活@篠崎=京響

いやー、やっぱり地元はいいわー。と、旅先から帰ったおばちゃんのような感想をつくづく吐いてしまいたくなる本日のコンサートでした。日々新しいオケに出会うのもよいのですが、何もかも馴染みのこの安心感もよいわー。いかにも日本っぽい細やかなところまで神経の行き届いた感も、安心するしね。


このシリーズも3年目です。全部終わって思うことはひとつで、京響の定期なんかでも、そこそこ満足はしても、もう一度この人で聴きたいと思う指揮者は年に1〜2人しかいないのですが、このシリーズ、毎回満足して次も行こうと思うのは、インタープレテーションが伝わって来るからなんだよなあ、と思うわけです。ああ、マーラーってばこんなことが言いたかったのね、という、そういうもの。私は技術的な上手さとか美しさとかより*1、そういうものを求めている聴き手なもので。まあ篠崎さんがそういうセレクションしてるってのもあるんでしょうけど、それも込みで。

そういえば篠崎さんはフィンランド・キュミ・シンフォネッタの首席指揮者だそうですが、今回ヘルシンキ初訪問してどんなところが知った直後で*2マーラー音楽監督を務めたハンブルク歌劇場に長居をしたせいもあり、ダブルで縁のあるコンサートでもありました。


思ったことは、びわ湖ホールで聴くと金管の粗が全く見えないということだったり。いつも金管セクションの挙げ足を取ってすみません。でもあの隠し事が何も出来ない京都コンサートホールの音響だからこそ京響はすごく鍛えられたというのは絶対あると思うので、これからも頑張って下さい。

2楽章の遠さと3楽章に入ったときの近さ?生々しさ?の対比もいいですね。音響的にはどっちも臨場感があるんだけど、そういう遠さじゃなくて、楽想による過去と現在の対比がちゃんとあって。


合唱は300人くらいいてすごい人数だったけど(それを言ったらオケも総出演+αのすごい状態だったけど)、声楽アンサンブルが入るせいか、こんだけの人数なのに芯がある感じで、これもちょっと新鮮でした。大編成ならではの困難さも全く感じない演奏でした。って、この規模をそう何回も聴いたことがあるわけじゃないけど、ちょっと比較にならないかもだけど、PROMSで大規模楽曲ゴシックを聴いたときは*3、あー大編成ってこういう大変さがあるのかー的な難しさがあったけど、そういうの全く無しでした。

ソリストは、市原さんは普通に良くて、メゾの人は私は好きじゃないなあ。言葉がはっきりしないし、響きが曇っていて音が埋没しやすい感じで*4


エンディングは・・・マーラー、あんた、しつけーよ!(笑)マーラーがしつこくて嫌いだという評を見聞きする割には全然そういう印象がなくて、特に一番直近なんてDR響+ダウスゴーのそれはそれは涼やかな10番*5、Kglカペルの奇想天外な6番(誉め言葉)だったりしたもので余計遠い印象を持っていたものですが、今日よく分かりました(笑)。うーん、これはしつこい。

http://www.keibun.co.jp/culture/event/detail.php?event_id=2620
篠崎靖男プロデュースオーケストラシリーズVol.3
マーラーの復活」 (交響曲第2番)
2013年5月19日(日) 14:00 開演 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール

大編成オーケストラ、独唱、合唱、そしてオルガンやバンダ(別動隊の金管楽器)まで用いたかつてない規模。
指揮者・作曲家マーラーが壮大なスケールで描いた、まさに宇宙が鼓動するその響きがついにびわ湖ホールに響きわたります!
滋賀ゆかりの指揮者、篠崎靖男と京響のコンビが創り出す荘厳なマーラーの世界をぜひご体感ください。

指揮 篠崎靖男(フィンランド・キュミ・シンフォニエッタ芸術監督)
独唱 市原愛(ソプラノ) アンナ・クオ(アルト)
合唱 びわ湖ホール声楽アンサンブル、KEIBUN第九合唱団
管弦楽 京都市交響楽団

*1:もちろんそれがないって言ってるわけじゃない・・・どころか、ドイツを漫遊した後で聴いても、やっぱりすごいと思う。

*2:真冬だった・・・風景がニョロニョロがいても全くおかしくなさそうだった・・・

*3:これマーラーの千人には及ばないけどそれに次ぐ規模で、舞台を見てて、移動してくる音とビジュアルに笑えてくるくらいだったんだけど。特に合唱が。

*4:小さくても埋没せずにハーモニーの一部として識別出来るタイプの音が好き。

*5:残響が消えた後もダウスゴーが1分以上も手を上げたまま沈黙が続いた。すごかった。

帰ってきました。

今回の旅程は、結局こうなりました。訪問ハウス数は7、他にコンサートホール1、どこも個性があって面白かった。それにビックプレゼントもあったしね。既に書き溜めてあるレポと合わせて、少しずつ公開して行きます。

DR今月の注目番組

最近紹介をサボってたDRのP2 Koncertenですが、今月の番組表からワーグナーの注目番組をいくつかピックアップします。20日の変則的な時間帯の放送を忘れないようにしなきゃ。
ちなみにDRの最近のストリーミングURLはこちら。以前のURLは使えなくなってます。http://live-icy.gss.dr.dk:80/A/A04H.mp3

  • Wagner: Tannhäuser
    19. maj 2013 19:20
    - i en historisk optagelse fra New York med en række af efterkrigstidens store Wagner-fortolkere. Bl.a. tenoren Hans Hopf som Tannhäuser, sopranen Leonie Rysanek som Elisabeth og barytonen Hermann Prey som Wolfram von Eschenbach. Metropolitan Operaens Kor og Orkester. Dirigent: Georg Solti. (17. december 1960).

  • Wagner 200 år
    20. maj 2013 15:00
    Hør uddrag af en række af Wagners store operaer, bl.a. Den flyvende hollænder, Lohengrin, Tristan og Isolde samt Nibelungens Ring. Og mød de danske Wagner-kendere Stig Fogh Andersen, Tina Kiberg, Eva Johansson, Michael Schønwandt og Kasper Holten, samt Kristian Leth, der giver et personligt bud på en forståelse af Wagners kunst idag.

  • I dag er det Wagners fødselsdag
    22. maj 2013 19:20
    Wagners 200 års dag fejres med bl.a. Valkyrieridtet, uddrag af Tannhäuser samt Sentas Ballade og Hollænderens monolog fra Den flyvende hollænder. Hør også sjældent spillede klaverværker og sange af den unge Wagner. Inga Nielsen, sopran. Robert Hale, baryton. DR SymfoniOrkestret. Dirigent: Michael Schønwandt. (Koncert 14/8 1997). Magdalena Hinterdobler, sopran. Tobias Koch, klaver m.fl. (Koncert i München, januar 2013).

  • Das Liebesverbot
    25. maj 2013 19:20
    - tidlig opera af Wagner i en historisk optagelse fra Wien 1963 med bl.a. Anton Dermota, Hilde Zadek, Heinz Imdahl og Kurt Equiluz. Wiens Radiosymfoniorkester. Dirigent: Robert Heger.

P2 Koncerten på P2 Klassisk
Wagner 200 år.
Hør uddrag af en række af Wagners store operaer, og mød en række danske Wagner-kendere, bl.a. Kristian Leth, der giver et personligt bud på en forståelse af Wagners kunst i dag.

  • Ca. 16.00 Sopranen Ann Petersen om vejen til Wagner.
  • Ca. 17.00 Bassen Stephen Milling om Wagners skurke.
  • Ca. 18.00: Sopranen Tina Kiberg om Wagners kvinder.
  • Ca. 19.00: Dirigenten Michael Schønwandt om hvordan Wagner fortæller historier med musikken.
  • Ca. 20.00: Tenoren Stig Fogh Andersen om Wagners helte.
  • Ca. 21.00: Instruktøren Kasper Holten om den visionære Wagner.

Vært: Lotte Heise.
www.dr.dk/p2koncerten
(Hør et uddrag af udsendelsen 00.20).

Playliste

  • Siegfried-Idyl, Siegfried-Idyl med Richard Wagner Siegfried-Idyl, Siegfried-Idyl | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Roger Norrington
  • Valkyrien, Ein Schwert verhiess mir der Vater med Richard Wagner Valkyrien, Ein Schwert verhiess mir der Vater | Komponist: Richard Wagner
  • Mestersangerne, Morgenlich leuchtend in rosigem Schein med Richard Wagner Mestersangerne, Morgenlich leuchtend in rosigem Schein | Komponist: Richard Wagner Solist: Jonas Kaufmann Dirigent: Marco Armiliato
  • Siegfried(opera)komplet med Richard Wagner Siegfried(opera)komplet | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Georg Solti
  • Siegfried(opera)komplet med Richard Wagner Siegfried(opera)komplet | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Georg Solti
  • Tannhæuser(opera)komplet med Richard Wagner Tannhæuser(opera)komplet | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Georg Solti
  • Tannhæuser(opera)komplet med Richard Wagner Tannhæuser(opera)komplet | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Georg Solti
  • Tristan og Isolde, Ich bin's, ich bin's, süssester Freund! (3. akt) med Richard Wagner Tristan og Isolde, Ich bin's, ich bin's, süssester Freund! (3. akt) | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Antonio Pappano
  • Tristan og Isolde, Mild und leise wie er lächelt med Richard Wagner Tristan og Isolde, Mild und leise wie er lächelt | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Antonio Pappano
  • Tristan og Isolde, Forspil (1. akt) med Richard Wagner Tristan og Isolde, Forspil (1. akt) | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Antonio Pappano
  • Den flyvende hollænder, Den flyvende hollænder med Richard Wagner Den flyvende hollænder, Den flyvende hollænder | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Otto Klemperer
  • Rhinguldet, Rhinguldet med Richard Wagner Rhinguldet, Rhinguldet | Komponist: Richard Wagner Solister: Claire Watson , Eberhard Wächter , George London , Gustav Neidlinger , Hetty Plümacher , Ira Malaniuk , Jean Madeira , Kirsten Flagstad , Kurt Böhme , Oda Balsborg , Paul Kuen , Set Svanholm , Waldemar Kmentt og Walter Kreppel Dirigent: Georg Solti
  • Rhinguldet, Rhinguldet med Richard Wagner Rhinguldet, Rhinguldet | Komponist: Richard Wagner Solister: Claire Watson , Eberhard Wächter , George London , Gustav Neidlinger , Hetty Plümacher , Ira Malaniuk , Jean Madeira , Kirsten Flagstad , Kurt Böhme , Oda Balsborg , Paul Kuen , Set Svanholm , Waldemar Kmentt og Walter Kreppel Dirigent: Georg Solti
  • Rhinguldet, Rhinguldet med Richard Wagner Rhinguldet, Rhinguldet | Komponist: Richard Wagner Solister: Claire Watson , Eberhard Wächter , George London , Gustav Neidlinger , Hetty Plümacher , Ira Malaniuk , Jean Madeira , Kirsten Flagstad , Kurt Böhme , Oda Balsborg , Paul Kuen , Set Svanholm , Waldemar Kmentt og Walter Kreppel Dirigent: Georg Solti
  • Parsifal, Nicht Dank, Haha, was wird es helfen? (1. akt) med Richard Wagner Parsifal, Nicht Dank, Haha, was wird es helfen? (1. akt) | Komponist: Richard Wagner Solister: Kurt Moll , Georg Tichy , Heiner Hopfner og Dunja Vejzovic Dirigent: Herbert von Karajan
  • Parsifal, Gesegnet sei, du Reiner, durch das Reine (3. akt) med Richard Wagner Parsifal, Gesegnet sei, du Reiner, durch das Reine (3. akt) | Komponist: Richard Wagner Solister: Kurt Moll og Peter Hofmann Dirigent: Herbert von Karajan
  • Ragnarok(opera)komplet med Richard Wagner Ragnarok(opera)komplet | Komponist: Richard Wagner Dirigent: Georg Solti

お願い/シェア希望

20日のDRのワーグナー生誕200年記念プログラムのステファン・ミリンのパートの最初の曲が素晴らしく良かったのだが、マイスタージンガーみたいな明るい曲調のバス*1。忘れられない。どなたか録ってたらシェアして下さい。日本時間21日0時〜15分くらい。後日出たプレイリスト(上に添付)を見ても、実際に流れた曲数に対してリストが少な過ぎて、全然分からないんです。

*1:マイジンそのものからの抜粋なのかな、なんだかあまりにも演奏が現代的でなくて全く別物みたいだった。

掘り出し物のアイーダ@エッセン

フィンランドの建築家アールトの劇場ということで訪れたエッセンですが、期待に違わず、劇場が良かったです。この建築家に特有の曲線を有するフォルムなのはもちろんですが、実際に中に入ると、エントランスからオーディトリウムに達するまでのアプローチがどの瞬間を切り取っても面白くて伸びやかな空間になっていて、地下のカフェと1階のホワイエが窓の外の緑の空間によって連続して見えるところとか、白い壁にレイアウトしてある縦長の窓から見える光がヨーロッパの長い夜で幕間毎に違った表情を見せていくところとか、外部空間の使い方が、さすがこのクラスの建築家の仕事だと思いました。ホワイエと比べるとオーディトリウム空間は普通でしたが、私の観たアイーダではうまいこと空間を使ってまして、こういう風に空間が生きているのを見るのはいいですね。ちなみに座席配置はこんなんです。
http://www.aalto-musiktheater.de/assets/box/640/856_1208_Aalto_sitzplan_gro.jpg

音響も実によく、実はチケットを買う時にオンラインでは売り切れで、慌ててオフィスに連絡して取ったんですが、そんときに背が低いことを申告してチビに良い席をくれと頼んだら2階正面最前列を割り当てられてしまったので心配していたのですが、ここの2階は音響的に舞台にすごく近く感じる、つまり臨場感がものすごく良い条件で、非常にファインで聞きやすく、細かなニュアンスで感じることの出来る珍しい2階正面でした*1。価格も40ユーロ台だし、この劇場に行く時は2階正面をお薦めします。


さて肝心のパフォーマンスですが、こちらも予想を大幅に裏切って良かったです!なんと言ってもアイーダを歌ったアメリカ人ソプラノのAdina Aaronが掘り出し物でした。すごく密度の濃い声を持ってて、ソプラノとしてはむしろ低く感じるのに煌きのある種類の声で、弱音の響かせ方が素晴らしく上手く、また弱音からフォルテに持っていくテンションも素ン晴らしく*2、ある特定のパターンだけでなく全体に表現が強いという理想のアイーダでした。エッセンではソリストは全く期待していなかったのですが、ここ最近のライブ・録音も含めてぶっちぎりのアイーダでした。私はアイーダには恵まれているらしく、過去3回の実演で2回も絶品のアイーダに当たっています*3。難を言えば、高音から高音の範囲内の音に下がるときにやや不安定な傾向があるかもしれませんが、それは「あとこれが」の法則*4ってもんです。

劇場のサイトに音源がありますので聴いてみてください。動画の下の "Aida: Klangbeispiel" (sound sample) から。録音だとちょっと細部が甘く感じるかもしれませんが、生では録音に入らないニュアンスがここに重なるため、全く気になりません。
http://www.aalto-musiktheater.de/wiederaufnahmen/aida.htm#multimedia
Download


さて一休みして演出。同じく劇場サイトで写真が見れます。
http://www.aalto-musiktheater.de/wiederaufnahmen/aida.htm#bilder
一応現代演出でアイーダがピンク、アムネリスが赤のドレスを着て登場するのですが、先述したアディーナ・アーロンが褐色のアメリカン・ブラックなので何もしなくても充分アイーダっぽい世界感になります。アイーダ前奏曲は私は毎回よく分からないと思いつつ聴いていたのですが、この演出ではこの部分をアイーダとアムネリスの心理劇として演出しており、はじめてここの音楽がしっくり来ました。ということから分かるように、特筆するようなコンセプトがあるタイプではないが音楽の読み込みがうまい種類の演出だと思いました。

いかにもドイツっぽいのが凱旋の場の扱いで、ここで登場するのは、戦争によって体に重大な不具を負った戦傷者達、寡婦達、父をなくした赤ん坊とその母親達(ティーンエイジャー)、戦争に奉仕する子供達といった行列がアナウンス付きで登場し、その間にキャバレー紛いの扮装の双子のニンフ、ワニ男やエレファントマンなどの昔のフリークス映画の世界の不具者達、裸のまま四つん這い歩きを強要されている(おそらく性的な罪を犯した設定であろう)女達などの入るパレードとして演出されます。最後に出て来るのが同じく裸(一部は靴だけ履いている)のアモナズロ含む捕虜達と続きます。ちなみにイチモツは無し(裸タイツに元々作ってない)でした。第一次対戦辺りのモノクロフィルムのイメージとフリークス・サーカスをミックスしたコンセプトで、演出の見せ場の凱旋の場をこういう風に処理するのは、いかにもドイツ風だと思いました。

なお、ランフィスと合唱は各階のバルコニーから歌われましたが、アールトの曲線のあるバルコニーの形がうまく使ってありました。劇場全体のあちこちから響き渡る合唱空間の中にいるのも面白い経験でした。

あと巫女が刀を振るって生贄の子供の血を絞ったりするのですが、アイーダの前でそれやっててアイーダは目を背けてたりする演技付けなのですが、巫女にこういう役割をさせるのは珍しい気がしました。歌唱自体もそれに合わせてあったのか、いつもバックミュージックみたいになる巫女の音楽が一人の人間として響いて来て(もっと言うとこのシーンは、巫女+合唱でバックミュージック的になるところを、巫女がソリストで合唱がバックミュージック的に役割を変えて届いて)、こうもなるのかあと、なかなか新鮮な印象を受けました。

他は、全体に音楽の読み込みがよく、人物の動きや場面転換は穏当ながらも自然な処理でしたが、最後の地下牢のシーンで遠近法を使って舞台を無限に続く空間に見せたのは、特に3幕から4幕への切り替わりでセットの前半分をそのまま後ろ半分だけ接続する方法で無限に続く回廊が現れる瞬間は、かなりはっとさせられました。その後のデュエットでアイーダとラダメスの位置が前後すると、遠近法のせいでアイーダがありえない大女に見えてしまったのはご愛嬌。


他キャストですが、ラダメスは悪くはなかったと思います。若々しい声で適切に歌えて、変に持ち上げたり引っ張ったりする癖もなく、少なくとも、それ未満の多いこの役としては満足しなければいけない出来だと思います。ただ、私の価値観が変なんですが、卒が無くって、盛り上がりも一定のルールで処理してるように感じてしまって、その意味でもの足りない面も。ただ、昨今のテノールというもの、特にスピントより重いテノールにおいては、こういう種類の不満が出るのは贅沢なことで、とにかく声さえ出ればよいって人選が蔓延してるなか、劇場の良心を感じました。

アムネリスは若いイタリア人メゾだそうですが、声も歌唱もイマイチだったかな。特に前半が不安定だったような。

他は、ランフィスを歌った人は、この劇場のベテランバスだそうですが、実によく響くいい声を持ってました。正確さはすごく良いわけじゃないけど。他はみなさんそれなり。

オケは実に良かったですねえ。変に主張せず、しっかり・しっとりドラマを支えていました。オケの地力自体も悪くないけど、指揮者の統制が良かったタイプの出来だと思いました。


さて、この上演で特徴的なことがひとつあって、それは、なんと、字幕がないことです!常設劇場のフルのオペラでしかも上演地の母国語でないパターンで、字幕が無かった経験って他にないのですが、少なくとも、このアイーダではありませんでした。隣に座ったおばあさまとの英語・独語混じりの不自由な会話によると、少なくともアイーダではいつも無くて、代わりに売店でリブレットを売っているそうです。この演目だけなのか、いつもそうなのか確認するのを忘れてしまいましたが、そもそもよくある電光掲示板型の字幕装置が無くて、この公演で唯一演出上字幕が出た凱旋の場では*5、下から映写するタイプの字幕が使われましたが、私はそれはその時代っぽさの演出の一環なのかと思って観てましたが、あれがこの劇場のデフォルトの字幕なのだそうで。

というように、様々な点で興味深いエッセンの劇場でした。上演の質も高かったし、劇場も音響もよいし、サイトに英語情報がないのがちょっと敷居が高いですが、オフィスでは問題なく英語が通じますので、機会があれば是非お立ち寄りを。

http://www.aalto-musiktheater.de/wiederaufnahmen/aida.htm

Aida, Oper von Giuseppe Verdi
Aalto-Musiktheater, Essen
3rd May 2013 Fri 19:30

Musikalische Leitung: Srboljub Dinic
Inszenierung: Dietrich W. Hilsdorf
Buhne/Kostume: Johannes Leiacker
Choreinstudierung: Alexander Eberle
Wiederaufnahme am 30. Marz 2013

Der Konig: Michael Haag
Amneris: Laura Brioli
Aida: Adina Aaron
Radames: Zurab Zurabishvili
Ramphis: Marcel Rosca
Amonasro: Mikael Babajanyan
Bote: Albrecht Kludszuweit
Tempelsangerin: Astrid Kropp-Menendez
Memphis Twins: Jessica De Fanti-Teoli, Raquel Lopez Ogando

Chor: Opern- und Extrachor des Aalto-Theaters
Orchester: Essener Philharmoniker

*1:一般に2階正面はその真逆の音響条件です。当サイトも長いこと音響レポを書いてないので、新しい読者のために。

*2:この「ン」に私の気持ちを感じて下さい。

*3:もう1人は日本人ソプラノ並河さんであることにも言及しておかなければなりません。http://d.hatena.ne.jp/starboard/20110305

*4:素人にも「あとこのポイントが」と挙げられるくらいならその人は相当完成型に近いという、逆説的な現象を表す法則。未満だと「良かったような良くなかったような、なんて言ったらいいのかイマイチよく分からない」的な感想になりがち。

*5:ドイツの劇場なのにシンプルなドイツ語のアナウンスには字幕が出て、イタリア語には出ない不思議。

ついでに魔女の夜

ワルプルギスの夜(Walpurgisnacht)といえば、ここの読者的には、メンデルスゾーンカンタータ『最初のワルプルギスの夜』を連想するんじゃないかと思うんですが、これ4月30日にブロッケン山の一帯でイベントがあるそうです。宗教色は無くただの魔女仮装大会らしいですが、面白そう!行ってきたらレポします。

http://matome.naver.jp/odai/2135822039490406801http://rabitta01.blogspot.jp/2012/05/430-walpurgisnacht-in-schierke.html
http://www.ab-road.net/europe/germany/harz/guide/03186.html

追記

エッセンのバタフライが話題になったので、記録を残しておこうかと。

Giacomo Puccini : Madama Butterfly
("Madame Butterfly")
16 Feb 2013; 3 Mar 2013; 5 May 2013
In Italian, and surtitled in German
Essen, Aalto Theater
Conductor Stefan Soltesz / Wolfram-Maria Märtig
Producer Tilman Knabe
Sets, Costumes Gabriele Rupprecht
Chorus master Alexander Eberle
~
Cio-Cio-San Karine Babajanyan / Annemarie Kremer
Suzuki Ieva Prudnikovaite / Anja Schlosser
Kate Pinkerton Marion Thienel
BF Pinkerton Thomas Piffka
Sharpless Heiko Trinsinger
Goro Rainer Maria Röhr / Albrecht Kludszuweit / Ivan Turšić
Der Fürst Yamadori Günter Kiefer / René Aguilar
Onkel Bonze Marcel Rosca
Yakuside Arman Manukyan
Der kaiserliche Kommissar Michael Haag
Der Standesbeamte René Aguilar / Ulrich Wohlleb
Die Mutter Cio-Cio-Sans Marion Steingötter
Die Base Kyung-Nan Kong
Die Tante Uta Schwarzkopf

遠征計画/ケルンとエッセンとデュッセルドルフ

明日から遠征に出ます。今回はヘルシンキコペンハーゲンハンブルクとその周辺を回る予定。主目的の方は前に書いた通りなので、ハンブルク滞在中のおまけ日程の話。1ヶ月以上前に書いて、下書きのまま放置していた文章に書き足したので、文章の時系列がなにかおかしいですが、まあこんなところを回ろうと思ってます、ということで。


5月のドイツ滞在に備えて、コメント欄で教えて頂いたデュッセルドルフ、エッセン、ドルトムントも調べていて、ついでにケルンも希望で、諸々の日程を考えるとこんな感じ。

  • 5/2(木) ケルン Franz Schreker: Die Gezeichneten(烙印を押された者)
  • 5/3(金) エッセン アイーダ


調べてたらケルンで予定されてるシュレーカーのオペラがヒットで、色彩感と透明感のあるオケパートがとても私好みである。ウィーンの作曲家だがおフランスっぽい系統。

http://www.youtube.com/watch?v=_IMU4rfCUtE
http://www.youtube.com/watch?v=EAjNNJhzBpc

ケルンの劇場のサイトに写真とビデオが出て、これも面白そう。現代と過去が混じってるのね。ケルンのこのタイプの演出は前も良かったから、今度も期待しよう。このオペラは予習しとかないかんなあ。
http://www.operkoeln.com/programm/57356/video/


お次はエッセン。なんかバタフライが面白い。

現代日本設定の演出で、蝶々さんの元同僚はギャルっぽいフリフリ服を着て勢ぞろいして*1、これは是非右下からビデオを見て頂きたいのですが、蝶々さんは黒髪を金髪に染めたプリン頭、部屋にはオバマ・ポスターと星条旗アメリカン・キャラクターのぬいぐるみ、部屋着はピンクのジャージで、アメリカナイズされたジャパニーズ・ガール=ヤンキー、しかし部屋の作りはとってもチープでカラーボックスが置いてあるような公団住宅的安っぽさがよく出てて、この演出家は相当日本通である。しかしこう、美しくない方向に無駄に正確なのはどうかと思うよ。現地でこれ通じるのかな。

このバタフライは是非鑑賞して、才能の無駄遣い的ディテールに「ギャハハハ」とか笑いながら突っ込んでみたいものであるが、残念ながら日程が合わない。単独で行けば行けなくもない日程だが、ケルンのついでに回ると考えると、エッセンではアイーダを選択することに。アイーダの方はちょっとヘンな現代演出で、バタフライのような「ギャハハハ」的ヘンさではないのが残念である。ちなみにこのアイーダ、チケットは直前でも余裕だろうと放っておいたらオンラインでソールド・アウトになってしまったので慌てて問合せてなんとか入手出来たという経緯。現地じゃ人気なのかな。

エッセン、でもなんか、チープだけど面白いね。シニカルじゃなくて素直な感じがするし。
http://www.aalto-musiktheater.de/videos/


デュッセルドルフは去年のマイスタージンガー@ケルンでエファがすごく良かったんだけど、本来の意味の方の役不足というか、この人の実力だったらもっと表現の幅を要求される役で聴いてみたいと思ったバーバラ・ハーヴェマンが目当てで5/11の仮面舞踏会に行く予定。でもハンブルクの予定次第では諦めないと行けないかも。チケットだけは早々に抑えたけど、行けるといいなあ。

http://www.rheinoper.de/de_DE/events/detail/10760920/calendar
Giuseppe Verdi (1813 - 1901)
UN BALLO IN MASCHERA (Ein Maskenball)
Melodramma in drei Akten
Libretto von Antonio Somma

In italienischer Sprache mit deutschen Übertiteln

Musikalische Leitung Peter Hirsch
Inszenierung Stein Winge
Bühne Hartmut Schörghofer
Kostüme Tine Schwab
Licht Franck Evin
Choreographie Falco Kapuste
Chorleitung Christoph Kurig

Gustav Zoran Todorovich
Anckarström Boris Statsenko
Amelia Barbara Haveman
Ulrica Renée Morloc
Oscar Heidi Elisabeth Meier
Christiano Bogdan Baciu
Horn Günes Gürle
Ribbing Daniel Djambazian
Richter Klaus Walter
Diener Roland Steingießer
Chor Chor der Deutschen Oper am Rhein

Orchester Düsseldorfer Symphoniker

他に、近場ということで、リューベックとリューネベルクとキールも回りたいのだが、日程がなかなか合わない。頑張れば7日のバラフライ@リューネベルクと、9日のSekretarinnen@キール行けるかな。リューベックデンマークとドイツの中継地点だからまたご縁があるかな。

*1:どうでもいいが、みんな足長い。日本人と同じ格好するとよく分かる。オペラの合唱って揃ってふくよかだったりするので、あんま意識しないけど、やっぱ欧米人はスタイルいいのね。そもそもお腹は相当出てても足は長かったりするからなあ。

びわ湖ホール声楽アンサンブルがTVに登場

◆◆◆ びわ湖ホール声楽アンサンブルが歌うテレビ番組『びわ湖の歌声』が4月から放送開始 ◆◆◆
びわ湖ホール開館15周年を記念して、びわ湖ホール声楽アンサンブルの美しい歌声を、季節に合わせた世界の歌、日本の歌にのせてお届けしています。ぜひご覧ください。
○番組名:びわ湖ホール声楽アンサンブル「びわ湖の歌声」
○放送日時:毎月第1・第3金曜日 18時20分〜18時25分
5月・6月の放送予定:5月3日(金・祝)、5月17日(金)、6月7日(金)、6月21日(金)
○内容:世界の歌、日本の歌を1〜2曲
○放送チャンネル:びわ湖放送(BBC)

お知らせが来て、わーい♪毎回チェックしよう♪と思って、それで次に、えーと、これどうやって聞くの?京都で入るのかな?滋賀県まで行かないと入らないのかな(←コミュニティラジオを想像してる)、ネットで聞けるといいのにと思って、びわ湖放送のサイトをチェックしたら・・・・受信の仕方が分からない!全然書いてない!(びわ湖放送のサイト担当者さん要チェック!)しかし、なんか、ワンセグとか書いてあるし・・・・それってテレビ?え?テレビ?どうしたら見れるの?一体どうやってアクセスすればいいんだー!!!