ホールと音響のお勉強

このBlogでヒット数の多いキーワードに「東京文化会館 音響」とか「ホール 音響の良い席」みたいなシリーズがありまして、ああそういうニーズって多いのねーと。というわけで、そういうニーズに極めて親切な資料の紹介です。


http://www.city.takasaki.gunma.jp/soshiki/bunka/ka/documents/kouza02.pdf
「ホールの音響について」
高崎市のホールの改修を考える公開講座の講演録だそうです。

  • 残響時間と音線図が非常に参考になる。音線図という概念がある。
  • 反射音が空間全体に均等に届く構造がよい。多目的ホールでは均等にならない*1。シューボックス型ホールはこの点で有利。
  • 初期反射音は直接音から90msまでの反射音、それ以降は残響音。初期反射音が音響の鍵になるらしい。
  • シューボックス型のホールでは初期反射音が豊富。
  • シューボックス型のホールでは音がなだらかに綺麗に減衰する。
  • 反射音を作り出すために、客席エリア内に積極的に壁を作る試みもある。ベルリン・フィルハーモニーホールサントリーホールなど。

以下starboardの感想メモ。単なる素人考えです。

  • ということは、初期反射音が多い=>響きが豊か、しかし反射が多く長引き過ぎて残響音が多すぎると音の混濁、さらにはお風呂ホールになる、というような理解でよいだろうか。初期反射音は豊かにしたいが、残響は長引かせたくないと。
  • よく話題になる東京文化会館の4,5階がいい理由ですが、天井に近くて、反射音が多く届くことと、直接音と反射音が届くタイミングが近いことの両方が理由でしょうなあ。これが下の階になると天井からの距離が遠くて、天井から到達する反射音の量が減るうえに間隔が開いてしまって、豊かな響きではなくなると。上方階で音量感があるという感想とも合致する。
  • 初期反射音(反射何回分なんだろう)はリッチな方がいいが残響は早く減衰させようと思うと、天井と壁を反射しやすい素材にして、床は吸音素材みたいな手段だろうか。どっかに吸音面がないとピンポンしちゃうから。ホールにありがちな異様に厚い絨毯はそういうことだったのか。もちろん靴音の問題もあるだろうし。
  • NHKホールは私が聴いたところではそもそも反射成分が少なすぎ&あの広さではなかなか飽和しないから、内装をもっと反射リッチな素材に改装したらいいと思う。天井と客席の距離を一定に保とうとした努力は認めるけど、そもそも天井からの反射が少なすぎるんじゃ?ここ既に一回改装したんだよね。音響反射板の設置だっけ?
  • ところがどっこい、ホールで直に聴く場合は反射音は適度にあった方がいいけど録音を考えると反射音は嬉しくないのだった。つーか多目的だからスピーカーを想定しないといけないもんな・・・・いやもう無理じゃね。そもそも多目的ホールで高価な来日公演やるのは無謀だって*2
  • この資料は設計者の立場だから当然ホール全体の音響を均等にする観点なんだけど、当方として気になるのはホール内の座席戦略なわけで。いわゆるS席であるところの1階中央席は避けた方がいいなあと思いました。
  • 素朴な疑問だけど、センターって本当にいいのかな。客席エリアにわざわざ反射用の壁を作るくらいだから、壁近くにあった方がいいんじゃ。定位が偏って聴こえるほど近くはともかくとして、ある程度離れたら壁沿いの方がいいのでは。これまでの経験とも合致する。というわけで、被り席は避けつつ壁に近づくことを当面の戦略にしようと思います。

お次は音響反射板の勉強です。こちらから。

CiNiiが使える方はこんなのもいいんじゃないかと。

*1:この断面図、NHKホール・・・・

*2:そんなんみんな分かってるって。そもそも素人がちょっと考えてどうにかなるようなことじゃないって。