東京文化会館5階席レポ

ロベルト・デヴェリュー@バイエルン国立歌劇場を書くつもりではじめたら、ホールレポで時間切れになってしまった文章です。東京文化会館はうちのブログの検索人気キーワードだから、ま、いいでしょう。

バイエルンは関西に来ないので仕方ないから東京公演を見にやってきました。ちなみにローエングリンとはしごする予定です。一演目だけでは遠征する気になりません。

今回の遠征にはもうひとつ目的があって、それは、諸事情により国内のオペラ上演の可能なホールのお勉強をしておく必要に迫られていて、いまだ未体験の東京文化会館の5階席の音を確認しておくことでした。ちなみにNHKホールも上階席の経験はなかったので、これも経験して帰る予定です。

というわけで、まずホールレポから参りましょう。5階席サイド1列目に収まって思ったことは、視覚的には左右の見切れも殆どなく、舞台の奥まで見えていて、全然OKということです。海外の歌劇場の例だとプロセニウムの上のラインに最上階(の一番舞台寄りの席)を配置している(それより上には客席を作らない)というのがヨーロッパの典型的な馬蹄形劇場かと思うのですが、東京文化会館は4階席のサイドで既にプロセニウムより上にまるまるはみ出ていて、5階席は遥か上です。こんな高さ関係でも背もたれに完全にもたれたままで舞台の一番奥の壁まで見えていて、不満を感じませんでした。奥の壁に絵を描いて遠近感を演出するようなタイプの舞台セットだと確かにセットの良さが充分楽しめない場合もあるでしょうが、今回は大丈夫でしたし、大抵の場合は大丈夫ではないでしょうか。隣や後列との視界の取り合いもまずありません(←超重要。日本のオペラ鑑賞環境を不愉快にしている重大問題である)。

上階サイド席愛好家(オケの上昇音+舞台とオケピの音が分離して解像度が高い状態を好む)としての体験から申しますが、比較的新しく出来た劇場でもこんな状態は無理ですし、後述する音響の親密さも含めて、この前川建築の六角形劇場のよく出来ていることを改めて認識しました。座席数を稼ぎながら全ての席で見やすさと親密さを確保するよい解だと思います。このスタイル海外に売り込んだりしないんですか>前川事務所のみなさん。すっごいポテンシャルあると思いますけど。

さて肝心の音なんですが、これは噂に違わず非常に良かったです。おそらく天井と舞台手前の反響板が効いているのでしょうが、舞台の音を近く感じます。オケピの音もよい響きです。オケコンで5階席愛好者は結構いるようですが、オペラこそ5階席がよいと思いました。これまで4階席正面は経験あったのですが、ここだと(1階席前方などでの聴こえ方と比較して)声量の控え目な歌手の声は届きにくいのに対して、5階席だと満遍なく届く感覚です。この遠いのに近い親密さはいいですね。

ホールの話をこんだけしたついでに改善点を言及しとくと、出来た時代が時代だけに仕方ないんですが、階段しかないこと*1その階段がせせこましくて壁の色がドギツいので圧迫感があること、上階席から行きやすい場所に休憩時間を過ごすホワイエがないこと、などでしょう。

ホールの話題だけで時間が無くなってしまった。肝心の公演レポは後日。

*1:しかし、5階という言葉から予想していたよりも全然楽な階段でした。階段は踏みしろや踊り場の取り方で負荷が全然違いますから、やっぱり設計がよいのでしょう。私的には全然OKなレベルですが、お年寄りや普段運動不足な方にも楽しんで頂くことを考えて。